ちょうど良いタクシーの運転手
今週のお題 「秋の空気」
生後7ヶ月の息子とタクシーに乗りました。
自宅の最寄りまで地下鉄に乗り、歩いて帰る事もできたのですが、今にも降り出しそうな雨雲が気がかりだったのと、息子の機嫌もそろそろ崩壊しそうだったから。
運賃1000円以内でイケるであろう場所まで歩いて距離を縮め、タクシーを拾う。 自分のケチ具合にハッとし、嫌になる
個人タクシーの運転手さんは父親ほどの年齢の方でデカいベビーカーを笑顔でトランクに積んでくれました。何気ない所作にほっとさせられます
赤信号での停車、運転手さんが話しかけてきました
「あっ、ほら! もう木の冬支度が始まってる」
見ると街路樹が剪定されている最中でした。作業員二人が木に登り枝がバサバサ切り落とされていきます。進んで来た道を振り返ると大通りの木は全て“つんつるてん”でした
「あ~勿体ないなぁ。あの木、これから紅葉がキレイなのに。 黄色から赤色に段々と色が変わっていくのに」
運転手さんは心底残念がっているようでした。私もあの木の大きな葉が美しいグラデーションになるのを知っていたので残念な気分になってきました。たぶんあれはユリノキ
車内が一瞬しんみりとなって。
この運転手さんなんか良いな と思いました
初対面のお客さんと車中トークってなかなか難しいと思うのです。ある芸能人がこの辺に住んでるらしいとか、あのラーメン屋いつも大行列だけど自分は並んでまでは食べないだとか、いきがってる車をみつけてディスる笑いをとったりだとか、サービス精神がそうさせるのか、心地好い会話からズレちゃう事ってよくありますよね
この運転手さんは…
“余計な事”は言わない人だろうなと、なんとなくそう思いました
つんつるてんの並木道を抜けると、案の定息子がグズりだしおっぱいを吸わせてくれるまで大泣きしてやるぞモードに。
「僕もねぇ、子どもが4人いてね」
「ほぉ!それは大変ですね」
「まあ 大変だったんだけど。 一番上が女の子、二番目が男の子、それから男女の双子が産まれてねぇ。」
「うわぁ…ちょっと想像できないです、今息子ひとりだけでも大変です」
「はは だからねぇ、赤ちゃんの泣き声が懐かしいんですよ。今はいっぱい泣いたらええんですよ」
泣き止め泣き止めと、張り詰めた気持ちが緩みました。そっか、赤ちゃんだからいっぱい泣いたら いいよね
タクシーを降りると ああ 秋の空気になったなぁと、ほんの一瞬心がきゅうっとなり タクシー代が1160円だった小さなショックにかき消されたのでした